| ★若林顕氏、10月30日にカーネギーホール・デビュー! この秋、津田ホールでの《若林顕/ベートーヴェンの世界》で、ベートーヴェンの後期ソナタを2夜に渡って演奏する若林顕氏が、10月30日にカーネギーホール/ワイルホールにデビューします。 近年、海外での活躍が著しい若林氏ですが、今年も2月にトロント、8月にウィーンでいずれも初コンサート(トロントはヴァイオリン、ウィーンはヴィオラとのデュオ)を行い、いよいよこの10月にソロリサイタルでのカーネギーホール・デビューが決まりました。プログラムは津田ホールでの第1夜と同じ、ソナタ第27番〜第29番「ハンマークラヴィーア」です。 「心の中の苦悩とそれを受け入れようとする安らぎや広がりなど、ベートーヴェン後期ソナタのもつ奥深さを追求していきたい」と語る若林顕氏の、さらなる飛躍を前にした津田ホールでのリサイタルを、どうぞお聴き逃しなく。 |

| 若林顕氏からのメッセージ 1999年から2001年にかけて大阪にて「ベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏会」をする機会をいただきました。 表面的で分かりやすいメリハリの効いた演奏効果、ナルシシズム的な安直な表現、などが全く通用しない、音一つ一つに強い緊張感と意味を持った立体的で格調高い世界に圧倒される思いでした。 今回その中でも深く豊かな空間的広がりを持つ、後期のピアノソナタに再度チャレンジしたい、という思いでこのコンサートを開くことになりました。心の奥底からこみあげてくる熱い人間愛や情熱、生きる勇気、といった私が個人的に感じている音楽的イメージを皆様と共有できるコンサートにしたい、と思います。 又同時に、これを私の音楽家としての新たなる出発点にしたい、という強い気持ちを持ってコンサートに臨む決意でおります。 |
| 今、私たちが聴きたいのは、本物である。 奥田佳道(音楽評論家) 今、彼ほど堅実な技巧とみずみずしい音色を持ち、しかも交響的な造型に長けた日本人ピアニストは、そうはいない−−。 北欧の気鋭オスモ・ヴァンスカ指揮する読売日響とのグリーグ、そしてドイツの名匠ゲルハルト・ボッセ指揮する新日本フィルとのブラームスを聴き、あらためて、若林顕の誠実でひたむきなピアニスムに感銘を覚えた。 表層的な煽(あお)り、はったり、パフォーマンスで聴きてを惑わすのではなく、楽曲の本質に寄り添い、創造の喜びを分かち合おうとする姿勢が素晴らしい。端的に評せば、プロフェッショナルな理念と実践が有機的に結びついた彫りの深い演奏となる。時に地味に映ることもあるが、これも愛すべき個性で、実は彼ほど着実に芸格を高めているピアニストは少ない。少し賛辞が上滑りしているだろうか。 いや、そんなことはない。王道を行くリサイタル、CDリリースはもちろんのこと、内外の名匠との共演、クラリネットのカール・ライスターやオーボエのフランソワ・ルルーとのデュオでも頼もしい存在感を示すピアニスト。そう、若林顕はソロは言うに及ばず、マエストロからも、オーケストラからも、ジャンルを超えた名手からも「指名」が相次ぐアーティストなのである。しかも、構えの大きな本格派の作品との相性が抜群にいい。 ドイツ・オーストリアの古典派、ロマン派は文字通りライフワークだ。重層的なフランクやピアニスティックな魅力がこぼれるラフマニノフ、先のグリーグへの賛辞をもう少し続けたい気持ちももちろんあるし、ブラームスについても多くを語りたいのだが、今日のところは我慢。それで……。 若林顕が、ピアノの音色と相思相愛の津田ホールで満を持してベートーヴェンを弾く。実力派のなかの実力派が最高峰の鍵盤芸術に、あらためて想いを寄せることになった。若林顕がベートーヴェンのソナタを弾く、という話を耳にしただけで、覇気と風格に満ちた演奏が目に浮かび、ほほ緩むファンも多いのではないか(かく言う筆者がそう)。 このピアニストは、いつだって眼前の作品と真正面から向き合い、憧憬に満ちた眼差しを贈り、音楽の深遠さを紐とこうとする。 今、私たちが聴きたいのは、本物である。 だから私は若林顕のピアノを、ベートーヴェンを聴く。 |
| 若林 顕(ピアノ) Akira Wakabayashi, piano 絶えず音楽の本質に正面から向き合って、正統的なピアノ音楽を追求しつづけ、近年とくに国際的な活躍の場を広げている、今もっとも注目すべきピアニストの一人である。 東京芸術大学を経て、ザルツブルク・モーツァルテウムおよびベルリン芸術大学院卒業。田村宏、ハンス・ライグラフの各氏に師事。1982年第51回日本音楽コンクールピアノ部門第2位。留学中の1985年、第37回ブゾーニ国際ピアノコンクール第2位入賞。さらに1987年には、弱冠22歳でエリザベート王妃国際コンクール第2位受賞の壮挙を果し、一躍脚光を浴びる。 近年の活躍では、1998年、大阪でワイセンベルクの代役をつとめて好評を得たほか、ラフマニノフやフランス作品によるリサイタルでその評価を高めた。2001年にはスピヴァコフ指揮ロシアナショナル管弦楽団日本ツアーのソリストをつとめ、エーテボリ交響楽団やノールショッピング交響楽団へも客演、ストックホルムでのソロ・デビューを果し、国際的な活躍の地歩を固めている。また、クラリネットのカール・ライスター、オーボエのフランソワ・ルルー、ホルンのラデク・バボラク、チェロのスティーヴン・イッサーリス、ウィーン八重奏団等との室内楽にも定評がある。 2002年2月にはトロントにてMusic Toronto Chamber Music Seriesに出演。さらに秋にかけては、ニューヨークのカーネギーホールにリサイタル・デビューのほか、シカゴでのマイラ=ヘス/リサイタルシリーズに出演する予定である。 1992年出光音楽賞、1998年モービル音楽賞奨励賞受賞。 |